映画『きみとまた』を観終わったとき、胸の奥がずっと重いままでした。
ラブストーリーとも違うし、夫婦の物語とも少し違う。
一言では言えない、人と人が一緒に生きることの現実が映っていました。
印象に残ったのは、作中に出てきたセリフ。
「愛してるからこそ、できない」
普通なら「愛しているからこそ、何でもできる」って言いたくなるところを、
この物語ではその真逆が描かれていました。
この一言に、関係の終わりじゃなく、どうしようもなく深い愛情が詰まっていた気がします。
ほんまは一緒にいたいのに、できない
自分も昔、同じような感覚を抱いたことがあります。
「ほんまは一緒にいたい。
でも今の自分じゃ相手を幸せにできない」
って思って、苦しくて仕方なかった。
ただ好きという気持ちだけではどうにもならなくて、
現実に向き合ったときに「別れるしかない」と決める。
あの歯がゆさって、きっと経験した人にしかわからない。
映画を観ながら、そのときの気持ちを思い出しました。
あの頃は20代で、どうしようもなく未熟で、
何もできない自分が嫌で仕方なかった。
でも、それから20年以上たって思うのは、
「あのとき別れて正解やったんやな」ということ。
絶対に幸せにできてないし、
きっともっと苦しい思いをさせてたと思うから。
抱かれへん女の気持ち
この作品の中で特に心に残ったのは、
“抱かれへん女の気持ち”がとてもリアルに描かれていたことでした。
体を重ねるって、
ただの営みじゃなくて「愛されてる確認作業」でもあると思う。
でも、妊活が絡むとそれが「義務」みたいになって、
お互いに気持ちが冷めていく。
女の人は「母親」としての自分は認められてるのに、
「女」としての自分が置き去りにされる。
これって想像以上にしんどいことやと思う。
特に子どもがいると、
完全に離れることもできないし、
「私さえ我慢すれば…」って気持ちが出てくる。
でもそれを続けるほど、自分がどんどん空っぽになっていく。
映画を観ていて、
「この人はずっと孤独だったんやろな」
って思いました。
妊活という現実
『きみとまた』のテーマの一つは妊活でした。
「妊活」と聞くと、
「子どもを作るために頑張るんやろ?」
くらいに思われがちやけど、
あれは想像以上に過酷なことです。
女の人は体に直接負担がかかるし、
月に一度のチャンスがうまくいかなかったときの落胆も計り知れない。
男の側だって、
「支えたい」と思ってるのにどうしていいかわからないし、
プレッシャーを感じて“できなくなる”こともある。
周りから「子どもはまだ?」と何気なく言われるのが、
どれだけ心を抉るかもわからない。
『きみとまた』では、そういう“人に説明できない苦しさ”がちゃんと描かれていて、
とても誠実な作品だと思いました。
単純なようで単純じゃない、男の心
映画を観ていて、
「男って単純やろ」と思ってる人にこそ知ってほしいと思いました。
男は性欲があって、
いつも女を求める生き物だと勘違いされることがあるけど、
実際は全然違う。
性癖も気持ちのスイッチも人によって違うし、
プレッシャーがかかったときに
「できなくなる」こともある。
それを口に出すのは恥ずかしいし、
プライドもあるから言えない。
それなのに「どうしてできないの?」って責められると、
余計に心が閉じてしまう。
単純に見えて、単純じゃない。
「男やから大丈夫」って決めつけられるのは、
しんどいことなんやと思う。
この映画の男の主人公も、
そういう苦しさをずっと抱えてた気がします。
愛してる気持ちと、
できない現実の狭間でどうにもならない自分が嫌で、
それが余計に夫婦の距離を広げていく。
あの描写はほんまにリアルやった。
愛しているからこそ、離れる
改めて思うのは、
「愛してるからこそ、何でもできるわけじゃない」ってこと。
むしろ本当に愛しているからこそ、
「自分が一緒にいることで相手がもっと苦しくなる」って気づいてしまう。
それでも一緒にいる選択もあるけど、
あの映画では「離れる」ことを選んだ。
それは悲しい結末のように見えるかもしれんけど、
僕はあれでよかったと思う。
無理やり笑い合って暮らすよりも、
ちゃんとお互いの痛みを認めて、
新しい一歩を踏み出す方が誠実やと思う。
映画の中で、
「愛してるからこそ、できない」
って言葉を吐くときの表情が忘れられない。
愛してるのに届かない。
ただ一緒にいるだけじゃ埋まらないものが確かにあって、
それをどうすることもできない瞬間がある。
最後に
『きみとまた』は、
きれいごとでは語れない「愛の形」をちゃんと映した映画でした。
観る人によって刺さるポイントは違うと思うけど、
少なくとも僕は、
「人を思うってことは、簡単じゃない」
って改めて感じました。
昔の自分も、
「ほんまは一緒にいたいけど、今の自分じゃ無理や」
って泣きながら離れたことがある。
今となっては、あのとき別れて正解やったと思う。
絶対に幸せにできてなかった。
その頃の自分は子どもで、弱くて、何もわかってなかった。
でも、そんな不完全な自分も含めて、
愛していた気持ちは本物やった。
だからこの映画を観て、
20年以上前のあの気持ちを思い出せたことが、
なんか嬉しかった。
今どんかんなオッサンになった自分でも、
少しだけ優しくなれる気がした。
『きみとまた』、ほんまにいい映画でした。