1998年放送、TBS日曜劇場『なにさまっ!』。
主演は岸谷五朗と松雪泰子。
今見ると、「ああ、これは大人の青春ドラマやな」としみじみ思う一本や。
若さで突っ走る話やない。
かといって、落ち着きすぎた話でもない。
**30代前後の“まだ迷ってる大人”**を、
明るく、ポップに、でもちゃんと人間くさく描いたドラマや。
『なにさまっ!』というタイトルの意味
まず、このタイトルがええ。
「なにさまっ!」
若い世代がよく使う
「なにさまのつもり?」
あの、ちょっとムッとした感じの言葉やな。
でもこのドラマでは、
ただ相手を否定する言葉やなくて、
・相手の傲慢さに腹は立つ
・でも、なぜか気になる
・簡単に切れない関係
そんな微妙な距離感を表しとる。
まさに、主人公ふたりの関係そのものや。
あらすじ(ネタバレ込み)
学生時代から駅伝の花形選手で、
実業団でも活躍していた男や。
ところが、レース中の故障で選手生命は終わり。
その後は大手食品会社「チトセフーズ」でサラリーマンとして働くことになる。
しかも配属先は、
本社から外れた下町のしょうが工場。
でも風太郎は、
そこで腐ることもなく、
変なプライドも捨てて、
案外のんびり働いてる。
物語が動き出すきっかけ
ある日、風太郎は本社に呼び出される。
会社の経営は思わしくなく、
彼がいるしょうが工場も閉鎖の危機。
その打開策として呼ばれたのが、
商品開発コンサルタントの 沢木いづみ(松雪泰子)。
このいづみがまた、
かなりのやり手。
・頭の回転が早い
・仕事は完璧
・プライドも高い
イタリア食文化のエキスパートで、
これまで彼女のアシスタントについたエリート社員たちは、
全員、精神的にボロボロになってきた。
正反対のふたりがコンビを組む
そんな中、
「切り札」として送り込まれるのが風太郎。
体力だけはある。
変な自尊心もない。
言われたことを真正面から受け止める。
写真を見たいづみは、
「また体育会系か…」と最初から警戒気味。
ここから、
・プライドを武器に生きてきた女
・プライドを手放した男
この対照的な二人の仕事と関係が始まる。
仕事を通して見えてくる価値観の違い
いづみは、
結果を出すためなら妥協しない。
一方、風太郎は、
人との関係や現場の空気も大事にする。
最初は衝突ばかりやけど、
次第にお互いのやり方に気づき始める。
いづみは、
風太郎の「無理に偉ぶらない姿勢」に救われ、
風太郎は、
いづみの「本気で仕事に向き合う姿」に刺激を受ける。
恋と人生、どちらも一直線じゃない
このドラマ、
恋愛が主軸ではあるけど、
ベタな恋愛ドラマではない。
仕事の選択。
生き方の選択。
プライドとの付き合い方。
そういうものが、
恋の行方と絡み合って進んでいく。
「好きやから一緒になる」
それだけでは済まへん年齢の話や。
若手俳優たちの初々しさも見どころ
この作品、
今見るとキャストがめちゃくちゃ豪華。
・長嶋一茂(これがデビュー作)
・竹内結子
・内山理名
・藤木直人
みんな、まだ若くて、
ええ意味で“これから感”がある。
今の姿を知ってるからこそ、
この頃の初々しさは、なかなか味わい深い。
『なにさまっ!』が描いた“大人の青春”
このドラマがええのは、
「人生、やり直しがきく」って話やないところ。
過去は変えられへん。
挫折も消えへん。
でも、
・どう向き合うか
・どう生き直すか
それは選べる。
風太郎といづみの関係は、
その象徴みたいなもんや。
まとめ:今見ても色あせない理由
『なにさまっ!』は、
説教くさいドラマやない。
キラキラした成功物語でもない。
でも、
・プライドとの付き合い方
・仕事と人生の折り合い
・大人になってからの恋
それを、
明るく、ポップに、ちゃんと描いてる。
だから今見ても、
「ああ、わかるわ」ってなる。
静かにおすすめできる、
ええ大人の青春ドラマやで。
90年代日曜劇場が描いていた「大人像」とは何だったのか
『なにさまっ!』を見返して感じるのは、
90年代の日曜劇場って、
今とはちょっと違う「大人の姿」を描いてたな、ということや。
当時の主人公たちは、
いわゆる“勝ち組”ばかりやなかった。
完璧じゃない大人が主役だった
90年代日曜劇場の大人は、
・挫折を抱えている
・理想通りに生きられていない
・でも、投げ出してもいない
そんな中途半端さをそのまま背負ってた。
『なにさまっ!』の坂巻風太郎もそうや。
駅伝の花形選手だった過去。
怪我で夢を断たれた現実。
それでも会社員として、
現場で淡々と働いている。
「夢を叶えた大人」やなくて、
**「夢を失ったあと、どう生きるか」**を描いてた。
正義を振りかざさない大人
90年代の日曜劇場の主人公は、
あんまり“説教”せえへん。
正しいことを言う場面はあっても、
「俺が正しいやろ?」みたいな顔はせえへん。
『なにさまっ!』でも、
風太郎は
人を論破することもなければ、
上から指示することもない。
その代わり、
黙って動く。
黙って受け止める。
この静かな大人像が、
当時のドラマの魅力やった。
プライドとの距離感が絶妙やった
90年代ドラマの大人は、
プライドを「持つか捨てるか」やなくて、
どう付き合うかを描いてた。
沢木いづみのプライドは、
決して悪として描かれへん。
仕事ができる。
自分に厳しい。
その裏返しで、人にも厳しい。
でもドラマは、
「プライドを捨てろ」とは言わない。
「そのプライド、誰のために使うんや?」
そう問いかけてくるだけや。
仕事=人生のすべてではなかった
90年代日曜劇場の特徴として、
・仕事は大事
・でも、人生の全部ではない
このバランス感覚があった。
出世至上主義でもなく、
自己実現万歳でもない。
働きながら迷い、
人とぶつかり、
少しずつ折り合いをつけていく。
『なにさまっ!』も、
成功より「納得」を大事にしてた。
大人は「完成」していない存在として描かれた
今のドラマやと、
主人公が“完成された人物”として描かれることも多い。
でも90年代日曜劇場は違った。
大人になっても、
・迷う
・間違う
・自信が揺らぐ
それを隠さへん。
だから視聴者も、
「こんな大人でもええんや」
って思えた。
なぜ今見ると懐かしく、心地いいのか
今は、
・結果
・効率
・分かりやすい正解
が求められる時代や。
せやからこそ、
90年代日曜劇場の、
・遠回りする大人
・言葉にしきれない感情
・曖昧な答え
それが、
逆に新鮮に映る。
『なにさまっ!』はその象徴的な一本
『なにさまっ!』は、
90年代日曜劇場が大事にしていた
・挫折を抱えた大人
・プライドと距離を取る生き方
・派手じゃないけど前向きな結末
その全部が詰まったドラマや。
派手さはない。
でも、ちゃんと心に残る。
そんな時代の空気を、
今に伝えてくれる一本やな。